リミット 刑事の現場2 最終話まで

「死んであなたを忘れません。生きてあなたを愛しますから」


ドラマのクライマックスは、刑期を終えて出所した殺人犯、黒川との対決。見ていて「セブン」を思い起こした視聴者は多いだろう。たしかに構図は似ていたが、結末は異なり、かすかではあるが、力強い希望を感じさせる終わり方だった。印象的なセリフも多く、クライマックスにふさわしい場面だった。しかし、この物語の肝は、加藤あいの演じた茉莉亜が、恋人をひき殺した男を許した瞬間にあったのだと僕は思う。
ドラマは全5回で構成されており、いろいろな形で人間の「リミット」が示唆されていたが、梅木と茉莉亜というキャラクター設定に引きずられる形で、物語はどんな場面でも「人間は犯罪を許せるのか」という葛藤を発信し続けていた。刑務所に服役中の犯人を殺すために、刑事を続けている梅木は、憎み続けることを正義と位置づけていたし、茉莉亜は、啓吾と一緒にいながらも、殺された恋人を忘れられず、果ては犯人に執着する。それが人間であるなら、たしかに人間は終わっていると言えるだろう。
茉莉亜は黒川の計らいで、犯人の男と対面する。黒川は茉莉亜の憎悪を煽る。茉莉亜はとまどいながらも、男に怒りをぶつけてしまう。男も対抗して、服役して罪を償ってきたのに、なんでおまえに責められる、と声を荒げる。そういう男を「こいつはクズだ」と言い、黒川はさらにつけ込もうとする。この男が憎いと言え。許せないと言え。言えば自由にしてやる。そう言いながらナイフを男の首筋に当てる。
「許してください」と泣きながらあやまる男を見て、黒川は笑う。茉莉亜は男に言う。あなたを許します。
僕はどちらだろうかと考える。僕は、命の危機にさらされてようやく謝罪をはじめる男を見て、黒川と一体化していた。いや、自分の中の黒川を見つけた。茉莉亜も、彼女の中の黒川を見つけただろう。しかし、彼女は彼女自身を失わなかった。人がこうあり続けることができれば、人間は、もうしばらくは、終わらずに済むだろうと思った。